2021.07.06 外国人採用ノウハウ
日本の最低賃金は外国人労働者に適用される?外国人労働者の最低賃金
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あらゆる仕事で人手不足問題が進行する日本において、外国人労働者の受け入れが増え続けており、今や日本企業にとって外国人採用は当たり前となりつつあります。
外国人労働者を受け入れるにあたり、「賃金をどうするか」はとても重要な項目です。外国人労働者の多くは、日本に出稼ぎに来ているため、安すぎると早期離職に繋がってしまします。
賃金を決める上で、「外国人労働者に日本の最低賃金は適用するのか?」「適切な賃金はいくらなのか?」と疑問に思う方もいるのではないでしょうか?
そこで今回の記事では、「日本の最低賃金は外国人労働者に適用されるのか?」をテーマに、外国人労働者の「最低賃金」と「適切な賃金」について詳しく解説します。
外国人労働者と日本の最低賃金の関係
ご存知のとおり、日本には最低賃金法という法律があり、企業は労働者に対して最低限度の賃金の支払いが法律によって義務付けられています。最低賃金法が日本人に対して適用されるのはもちろんですが、果たして外国人労働者に対しても適用されるのでしょうか?
また、外国人労働者の中には、就労を目的としない技能実習生もいます。そんな技能実習にも最低賃金は適用されるのでしょうか?
外国人労働者と日本の最低賃金の関係についてみていきましょう。
外国人労働者に日本の最低賃金は適用される
結論から言うと、外国人労働者に対しても日本の最低賃金は適用されます。
最低賃金法は、国籍に関係なく、外国人労働者に対しても適用され、企業は外国人労働者に対して必ず最低賃金以上の金額を支払わなければいけません。「日本語がまだまだ未熟で業務上で支障が出るから」「教育や研修で日本人より工数がかかるから」といって賃金を安くしはいけないのです。
また、最低賃金は、時給によって定められますが、日給や月給の場合も同様、最低賃金以上の金額の支払いが必須です。そのため、日給・月給を時給換算した場合に最低賃金を下回ることがないよう、あらかじめ計算しておく必要があります。
技能実習生にも適用
最低賃金法は、技能実習生に対しても適用されます。
日本で培った知識や経験を発展途上国への移転を測り、発展途上国の経済成長を担う人づくりに協力することを目的とした技能実習では、基本理念として「労働力の需給に調整手段として行われてはならない」(法第3条第2項)と掲げているます。そのため、賃金に関しては、最低賃金を下回っても良いのではと思う方も中にはいますが、そうではありません。
国籍を問わずすべての人に適用される最低賃金法は、技能実習生においても適用されるため、誤って最低賃金未満で就労させないよう注意が必要です。
最低賃金未満で働かせる雇用者への罰則
最低賃金には、「地域別最低賃金」と「特定最低賃金」の2種類があります。
地域別最低賃金は、地域によって定められている最低賃金をいい、特定最低賃金は、特定の産業で設定された最低賃金をいいます。特定最低賃金は、地域別最低賃金よりも高い水準で最低賃金を設ける必要があると認められた産業にのみ適用されます。
地域別最低賃金以上の金額を支払っていない場合、最低賃金法違反にあたり50万円以下の罰金が科せられます。特定最低賃金以上の金額を支払わない場合は、労基法違反にあたり30万円以下の罰金が科せられます。
もし仮に、双方が最低賃金未満の賃金で合意した場合でも罰則の対象となります。最低賃金により、双方の合意は取り消され、最低賃金と同額かそれ以上の支払いが必要です。外国人労働者が最低賃金未満の賃金で合意したからといって、最低賃金を下回った賃金で働かせることは罰則の対象であるため注意しましょう。
最低賃金未満の賃金で働かせるブラック企業も
最近では、過酷な労働と不当な賃金によって外国人労働者が失踪してしまう事件もニュースなどで多く耳にします。
日本で働く場合、国籍を問わず労働保護法が適用され、外国人労働者であっても最低賃金・社会保険や健康保険、厚生年金など、日本人同様に制度を受ける権利があります。
「外国人だから適用されないだろう」「母国より稼げるはずだから少しくらい安くても良いだろう」という企業の誤った認識によって、外国人労働者の離職や失踪に繋がります。
「外国人だから」といってに日本の制度が適用されないということはないため、受け入れ企業は誤った認識をしないよう注意が必要です。
外国人労働者と日本人との賃金格差問題
株式会社パーソナル総合研究所が2019年6月に行った「外国人雇用に関す企業の意識・実態調査」によると、外国人離職率が高い職場ほど、外国人と日本人との賃金の格差が大きいことが判明しました。
参照元:https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/research/activity/data/employment-of-foreigners.html
外国人労働者と日本人正社員との月収の差は、平均4.6万円というデータがあります。同じ職場であっても、外国人労働者の方が給料が低く、日本人よりも外国人労働者の離職率が高い職場の賃金差は、最大10.6万円にも広がります。逆に、月給の差が少なければ少ないほど、外国人労働者の離職率が低い傾向にあります。
外国人労働者の採用の目的は、人手不足解消や優秀な人材確保など企業よって異なりますが、日本人との賃金格差問題は、せっかく採用した外国人労働者の早期離職の原因になってしまいます。そのため、企業は外国人労働者に適切な賃金を支払うことが大切です。
外国人労働者の適正な賃金は?
外国人労働者だからと言って最低賃金でよいというわけではありません。日本語がまだ未熟であっても、高いスキルや仕事に対しての知識・経験を持った外国人労働者も中にはいます。そのため、スキルや知識・経験は、外国人労働者の適切な賃金を決める上で重要な要素になります。
また、居住者か非居住者によって課税額が異なるため、賃金を決める上で注意が必要です。
以下では、外国人労働者の適切な賃金を設定する上で参考となる平均月収やスキルによる賃金設定、住民形態による税金の違いについて解説します。
外国人労働者の平均月収
在留資格区分 | 賃金 | 対前年増減率 | 平均年齢 | 勤続年数 |
---|---|---|---|---|
外国人労働者全体 | 21.81万円 | -3.1% | 33.3歳 | 2.7年 |
専門的・技術的分野 | 30.22万円 | -6.7% | 31.8歳 | 2.9年 |
特定技能 | 17.46万円 | - | 28.1歳 | 1.1年 |
身分に基づくもの | 25.70万円 | 4.2% | 44.4歳 | 4.3年 |
技能実習 | 16.17万円 | 2.5% | 27.1歳 | 1.7年 |
留学(資格外活動) | ー | ー | ー | ー |
その他(特定技能及び留学以外の資格外活動) | 20.53万円 | -6.1% | 32.2歳 | 2.8年 |
厚生労働省が出した、2020年の「賃金構造基本統計調査」によると、外国人労働者の平均月収は21万8100円でした。在留資格別にみると、専門的・技術的分野が最も多く30.22万円。技能実習が最も少なく16.17万円でした。また、2019年4月からスタートした特定技能は、施行されてまだ間もなく勤続年数が少ないせいか、17.46万円と低いめです。
永住者や日本の配偶者、専門知識や技術を持った外国人労働者は、勤続年数・年齢共に高く、比例して賃金も高い水準です。日本人においても専門的な知識や技術を持った人、長年働いている人の給料が高い傾向にあるのと同じように、外国人労働者に対しても同じような賃金が設定されていることが分かります。
スキルに応じた賃金設定
外国人労働者の賃金を決める上では、スキルや経験、資格によって適切な賃金設定が必要です。
前述したとおり、外国人労働者の中には高いスキルや知識を持った外国人もいます。例えば、在留資格「専門的・技術的分野」は、大学教授や経営管理、看護師や介護福祉士などが該当し、資格やスキルによって高い賃金が設定されています。
また、厚生労働省の「同一労働同一賃金のガイドライン」によると、同じ職場であっても、経験やスキルが違うことで別々の仕事に従事した場合に、それぞれに適切な賃金の支払いが必要とされています。
外国人労働者のもつスキルや知識に応じて異なる業務に従事させることで賃金の差が生じることは問題ではなく、むしろスキルや知識によって適切な賃金の支払いをする必要があるのです。
住民形態による税金の違い
外国人労働者が「居住者」か「非居住者」かによって課税方法が異なるため、住民形態の確認が必要です。主に留学生が確認の対象に当たります。
日本に居住する期間が1年以上の場合は「居住者」、1年未満の場合は「非居住者」に該当。留学生が居住者の場合、日本人アルバイトと同様に源泉徴収し、非居住者の場合は、租税条約による免税適用がある場合を除いて、給与から20.42%の所得税を源泉徴収します。
このように、留学生の生活の拠点がどこかによって課税額が異なるため、住民形態のあらかじめ確認することはかなり重要です。
なお、住民形態は、滞在予定期間が分かる在留資格認定証明書や在学証明書などで確認できます。
まとめ
最低賃金法は、国籍を問わずすべての労働者に適用される制度です。特定技能や専門的・技術的分野など就労を目的とした在留資格はもちろん、人材育成が目的である技能実習にも最低賃金法は適用されます。
そして、外国人労働者だからといって最低賃金だけ支払って働かせていいわけではなく、外国人労働者それぞれのスキルや経験・知識によって適切な賃金を設定し、支払うことが大切です。
日本人との賃金格差をなるべく減らし、活躍に見合う最適な賃金を支払うことで、外国人労働者、企業とも働きやすい環境づくりに繋がるでしょう。
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参考:https://global-saiyou.com/column/view/wage
https://bridgers.asia/recruit/gaikokujinroudousya-chingin01/
https://www.n-lights.com/nlplus/international-incometax-taxfree/
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57464030R30C20A3MM8000/